突然の至近距離に動揺してしまい、慌てて離れる。
でも、違和感に気付き、半袖から出ている芦屋さんの素肌に手を伸ばした。
「熱い」
それから芦屋さんのおでこに手を伸ばす。
「やっぱり。熱がありますよね?」
講演中、モニターに映し出される芦屋さんの額に浮かぶ汗が気になった。
照明のせいかとも思ったけれど、やはりこれは違う。
図々しくも、楽屋まで来たのはお礼を直接伝えるためと、気になる具合を確認するためだった。
「大丈夫だよ」
弱々しく、気だるそうに微笑む感じは言葉と相反している。
「大丈夫じゃありませんよ」
臓器移植後の免疫抑制療法を行うと、体の抵抗力が低下するため色々な感染症にかかり易くなる。
だから普通の人以上に健康に注意しなければならなくて、ちょっとした風邪でも担当医に連絡しないといけない。
「早く病院に行きましょう。越水さんに言って来ます」
急いで部屋を出ようとドアノブに手を掛けた。
でもその手は背後から伸びてきた手に止められてしまった。


