ホワイトのシャツにミモレ丈の黒のスカート、短めソックスにローファーパンプス。

理絵と佳苗がああじゃない、こうじゃないと議論しながら選んでくれた服装と誕生日にプレゼントしてもらったイヤリングを着けて、コンベンションセンターがある駅に来た。

会場までは徒歩2分。

収容人数がおよそ1500人とあって、駅から建物までは人でいっぱいだ。

受付で確認をしなきゃいけないから、と思って1時間も早く来たのに、人の列は建物の外側にまで及び、開演時間に間に合うのかどうか不安になる。

しかも今日はあいにくの雨。

傘を差している分、膨らんでいて、建物の入り口に入るまでが大変そうだ。


「早く見たいなぁ」

「本物に会えるかなー」


若い女性のテンションの高い声が耳に届いた。

それを機に辺りを見回すと、圧倒的に若い女性が多かった。

芦屋星は人気芸能人だ。

移植医療に関心があるなしに関わらず、彼をひと目見ようと足を運んで来ているのだろう。

これを皮切りに関心を持ってくれたらいいな、なんて偉そうに思ってしまったことを反省しつつ、時計を見ると、20分が経過していた。


「どうしよう」


とりあえず係の人を探そう。

そう思って列から外れようと一歩踏み出した時、入り口の方が騒ついた。


「キャー!!」

「星くーん!」


黄色い歓声に、芦屋さんが出て来たことが伺えた。

私もひと目見ようと踵を上げてみるも、遠過ぎて全然見えない。

諦めて姿勢を元に戻すと、芦屋さんの大きな声が響いた。