七夕に生まれた私の名前は如月菜那。

今日で満16歳。

改定前の現時点では結婚出来る年齢だ。

とはいえ、私に結婚願望はない。

パジャマを脱いだ時、鏡に映る、手術痕。

命を繋ぎ止めた傷痕は、身内から見れば美しいものでも、他人は目を背けたくなるに違いない。


「行ってきます」


有名なデザイナーが手掛けた制服を身に付け、指定の鞄を手にし、黒のローファーを履く。


「寄り道しないで帰って来るんだぞ」


白髪が目立ち始めた父の言葉に笑顔で頷き、玄関の扉を開けて一歩踏み出す。


「いてて」


手術から4年が経過したのに、湿度が高く、気圧の低くなる日は傷口が痛む。

腰の辺りに触れ、空を見上げれば今にも雨が降り出しそうな曇天が広がっていた。


「今年は会えたのかな?両想いなのに年に一度しか会えないなんて可愛そう」


なんて、織姫と彦星に想いを馳せてみたものの、恋愛の「れ」の字も知らない私に同情される方が可愛そうか。