「如月。本当に思い当たることはないのか?」
担任に言われて「実は」と小声で答える。
「芦屋星と会ったことはあります。多分」
「多分ってなんだよ」
担任の笑い声混じりのツッコミが職員室内に響き渡った。
教師がみなこちらに注目する中、担任は詳しく話せと言う。
「会ったことあるって言っても、その人が芦屋星本人かどうかの確証が持てないんです。私は本人だと思うんですけど。それに事務所の方は知らないですし」
何とも曖昧な私の答えに担任は顔をしかめた。
でもすぐにハッとしたような表情に変わり、自席のパソコンで芦屋星の事務所の連絡先を調べ始めた。
「如月。もし本当にお前に用があるのなら、こっちから連絡すれば良いことだ。本物かどうか確認してからな。教頭先生、電話してきた人の名前、分かりますか?」
担任の言葉に、教頭先生はグチャグチャな机の上から一枚のメモを探し出した。
「越水、という方です。連絡先も聞きましたわ」
「それ、貸してもらえますか?」
担任は教頭先生から受け取ったメモを手元に置きながら、芦屋星の所属事務所に『コシミズ』という名前の人がいるかどうかを電話で確認し、それから受話器を置いて私を手招いた。
「なんですか?」
「越水という人は芦屋星のマネージャーらしい。念のため、先方にも学校に連絡を入れたか確認を取ってもらっているが、詐欺じゃなさそうだな。よって、如月。今度はお前が電話してみろ」
担任はそう言うと受話器を手にして立ち上がり、私を椅子に座るよう促してきた。
「え?私が電話するんですか?」
こういうことは大人の方がいいと思ったから聞いたのに、担任は大きく頷くだけ。
仕方なく受話器を受け取り、教頭先生が書いた殴り書きのメモを解読しながらボタンを押す。


