七夕の伝説


想像していなかった人の名前が教頭先生の口から飛び出したので、質問内容を理解するまでに時間が掛かってしまった。

いや、正確には理解できていない。

だって芦屋星との関係性なんて聞かれても答えられるようなものはなにもないのだから。

首を傾げる私を見て、教頭先生は難しい顔をして言った。


「やはり怪しいですね。詐欺かもしれないから警察に連絡しましょう」


警察と聞いて、内心穏やかではいられない。


「どういうことですか?私に関わることなんですか?」


教頭先生ではなく、側にいた担任に聞くと小声で教えてくれた。


「ついさっき、校長先生宛てに電話が来たんだよ。『芦屋星の事務所の者ですが、如月菜那さんと連絡が取りたいので繋いでもらえませんか?そちらに在学中ですよね?』って」


これはたしかに怪しいし、怖い。

鳥肌が立った二の腕を自身の手でさすりながら続きを催促する。


「それで、校長先生はなんて答えたんですか?」

「校長先生は不在だから教頭先生が『個人情報だから教えられません』って答えた。それ以前に名前を言われたところで、教頭先生は全員分記憶している訳じゃないからな」


いや、教頭先生だって理絵のように優秀だったり、多額の寄付をしているとか、親が有名であれば名前を知っているはずだ。

腎臓移植の経験者というのもそこそこインパクトがあるとは思うけれど、まぁ、今回のことで覚えてもらえただろう。

なんたって、芸能関係者から連絡が来ることは珍しい上、出所が怪しくて警察に連絡するかどうか、生活指導の先生と興奮気味に話しているくらいなのだから。