翌日の昼休み。
「芦屋星に会っちゃった」
何気ない会話の中で、しかも感情を抑えて話したせいか、佳苗と理絵の反応は薄い。
「夢の話?」
「そっくりさんに会ったとか?」
まぁ、信じてくれ、という方が無理ある。
当の本人である私でさえ、夢だったんじゃないかって本気で疑っているくらいだし。
でも肩に残る温もりと優しい瞳は現実のものだった。
「すごく感じのいい人で、話しやすくて、マスク越しだったけどかっこよかったよ」
思い出すように遠くを見ながら話すも、ふたりには即座に否定されてしまう。
「いやいや。ないない。妄想でしょ、それ」
理絵が言った。
「妄想じゃなければ夢の中の話でしょ、それ」
佳苗が同調した。
「本当なんだけどなぁ」
呟くとふたりは顔を見合わせ、それから理絵が疑問を投げかけて来た。
「じゃあ仮にね、その話が本当だとして、芦屋星はそこで何していたの?」
「聞いてないけど、七夕祭りの駅にいたんだからデートの待ち合わせだったんじゃない?」
帰宅後、気になって芦屋さんのことを調べているうちに、熱愛発覚の記事が出ていた。
お相手は人気モデル。
スタイル良し、笑顔可愛い、性格も良さそうな、ステキな女性で……。
「あっ!」
思い出したように声を上げた私をふたりが揃って見た。
「恋人がいたら、一般人の誕生日のお祝いなんて普通しないよね?他の女子と会うなんて恋人に悪いもんね?でも、もしかして芦屋さんって実はそういうことしちゃう遊び人のタイプなのかな?誠実そうな感じがしたけど」
芦屋さんとの約束を思い出し、脈絡もなく話していると、佳苗が首を傾げた。