七夕の伝説


最後まで読み、ゆっくりと裏返す。

そこには綺麗な字で名前が書かれていた。


『如月菜那』


高まる感情が目に涙となり、溢れ出る。


「芦屋さん?」


俺の異変に気付いた職員の方が声を掛けてくれたが、俺は応えられる状態にない。

赤の短冊の辺りでもしかして、と思った。

白の短冊で手が震えた。

黄色の短冊に鼓動が早くなった。

そして今、確証が持てたのだ。


「良かった……」


元気でいてくれて。
 

「本当に良かった」


ずっと気になっていた。

俺は間違えを犯したし、彼女はもう俺になんて会いたくないと思っていたから彼女がどうなったのか、知る権利すらないと二の足を踏んでいたのだけど、本当はずっと気になって仕方なかったんだ。


『もう一度、恋をしたい』


その願いの書かれた嘘のない短冊を見つめ、涙を拭い、職員の方に短冊をお願いする。


「黄色の短冊を頂けませんか?」

「どうぞ」


受け取り、その場で願い事を書いた。


『会いたい。七夕の日に会いに行く。もう一度恋をしよう』