普段、午後8時にもなると閑散としているはずの受付前に職員らしき人が複数人集まっている。
なにをしているのかと思ったら、七夕の笹飾りを設置しているようだ。
「大きな笹ですね」
院内の職員の多くは、患者の芦屋絢が芸能人の芦屋星の弟だと知っている。
かと言って騒ぎになるのは本意ではないので、院内ではマスクを着用し、帽子を目深に被っている。
それがかえって怪しく見えるのだが、声を掛けた男性は俺に目をくれることも、気にかける素振りも見せず、質問に答えてくれた。
「竹はね、冬の寒さにも負けず、真っ直ぐ育つ生命力が備わっているんですよ。だから病院には打って付け。竹の空洞には神が宿るなんてことも言われているくらいです。どうです?あなたも願い事、書いてみますか?」
男性はそう言うなり、五色の短冊の入った箱を持って来てくれた。
「青の短冊は思いやりの心。赤の短冊は感謝の心。黄の短冊はうそをつかないこと。白の短冊は私利私欲で行動しないこと。黒の短冊は学業にはげむこと。さて、あなたはどの短冊に願い事を書きますかね?」
短冊の色に意味があるなんて知らなかった。
色とりどりの短冊が入っている箱の中を覗く。
そこにはすでに願い事が書かれた短冊がいくつも入っていた。
「これ、少し見てもいいですか?」
どんな願い事が書かれているのか。
気になり聞くと快く頷いてくれたので一枚、一枚手に取り文字に目を通す。


