はっきりと答えを出すと、昴はゆっくりと頭を上げた。
「そんなにコイツが好きか?」
消え入りそうな声に胸が痛む。
ここまで想われていたことに気付かなかったこと、想いに応えられないこと、芦屋さんを好きかどうかは別の話だと思っても、すべてが申し訳なくて、胸が張り裂けそうだ。
「ごめん。ごめんね、昴」
謝るしかなく、吐き出すように謝ると、昴は気持ちを落ち着かせるかのように玄関の天井を見上げ、息を長く吐き出した。
それから私を見下ろし、言った。
「お袋さんの分までお前は生きなきゃいけないだろ。親父さんの面倒だって、菜那がちゃんと見ろ。だからもう一晩、考えるんだ」
そう言われても私の気持ちが変わらないことは付き合いの長い昴なら分かるはずだ。
「ごめん」
呟いたと同時に流れ落ちた涙を、昴が拭おうと手を伸ばした。
でも、手は触れることなく元の位置に戻り、芦屋さんの肩をポンと叩くと、「明日もう一度来る」とだけ言って、自宅へと帰って行ってしまった。