「どうしたんだ?!」
昴におんぶされている私の姿を見た父が血相変えて飛んできた。
「大丈夫。少し頭痛がしただけだから」
「ほんとか?本当なのか?」
父は私と昴を交互に見た。
「俺が無理やり担いで来ただけっす」
父の視線を受け、昴が答えた途端、父の顔はホッとしたように緩んだ。
私が自分で大丈夫、と言っても信用してくれないのに何故、昴の言葉はすぐに信じたのか。
不思議に思った答えを父が口にした。
「やはり昴くんに話して見に行ってもらえて良かった。ありがとうな」
父の礼に昴は小さく会釈した。
でも、なんで。
「なんでお父さん、昴に話したの?」
意味が分からないと言うように、玄関先にも関わらず、父を問い詰める。
「昴は関係ないでしょ?昴をうちの都合で振り回さないであげてよ」
「いや」
静かだけれど、はっきりとした声に、昴を見上げると、柔らかな笑みを浮かべながら私を見て言った。
「関係なくねーから。俺はさっき菜那に話した通り、菜那になら腎臓をひとつあげてもいいっていうことを親父さんに伝えていたんだ。そのくらい菜那が好きなんだ。だから関係ないとか言わないでくれよ」
切なく微笑む昴の表情と告白を耳にしてドキッとした。
思わず俯くと、昴が父の方を見たのが分かったので、私も視線を昴から父に向けると、父は大きく頷き、言葉を繋いだ。
「菜那が検査入院した時、菜那が最近、何に悩んでいるのか知らないか、と聞いたんだ。その時、菜那の病状のことも話して。そしたら昴くんが『万が一の場合、俺がドナーになる』『菜那が俺を好きでなくてもいい。菜那が生きていてくれるのなら、偽装結婚だっていいから俺の腎臓を使ってくれ』って、昴くんが言ってくれたんだ」
再発という結果が出た今、娘を想う父にとっては縋り付きたくなるような良い話なのだろう。
でも、昴の言うのは現実的ではない。
偽装結婚はもちろん問題だし、婚姻関係を結ぶには昴に年齢が足りない。
ひと月待って昴の誕生日に入籍したとしても、夫となった期間が短過ぎるし、倫理上の問題をクリア出来るとは思えない。
そもそも昴は私の気持ちを知っているはずなのに……


