「おい、菜那。ちゃんと前見ろよ。ていうか、顔色悪いぞ?体、大丈夫なのか?」
「昴……体……」
大丈夫じゃない。
大丈夫じゃないからこそ、いつもと同じ台詞が、心に刺さった。
ドロドロとした感情が涙となって溢れ出る。
「…っ!…っ!」
当然、嗚咽を漏らして泣く私に、昴は困惑したことだろう。
でも昴は私を周りの目から遠ざけてくれて、それからしばらく落ち着くまで背中をさすっていてくた。
「ごめん」
駅前で泣き続けていたものだから、配慮してくれたといっても、相当な注目を集めてしまった。
前にサラリーマンに怒声を上げていた昴を嗜めたばかりなのに。
でも昴は気にしないと言わんばかりに小さく首を横に振った。
「そうだ、菜那。ちょっとだけ待っていられるか?」
「え?」
昴がそばを離れてしまうことが無性に心細くて昴の制服の裾を掴む。
「大丈夫だ。すぐに戻って来るから」
昴の優しい声を聞き、子供のように小さく頷く。
すると昴は私の頭を優しく撫でてから自販機でミネラルウォーターを買ってきてくれた。
「目。冷やせ。心配するから」
なるほど。
たしかに腫れた目で帰ったら父が心配する。
「ありがとう」


