「ごめんね」
帰り道、父に謝った。
「菜那のせいじゃないさ。それにまだ道はある。そんな絶望的な顔するな」
クシャクシャっと髪を撫でられた拍子に俯いた。
そうでもしなければ涙が溢れてきそうだったから。
だって私のせいだもの。
きっと芦屋さんに恋をしてしまったから、そのせいで体に負荷を掛けてしまったのだ。
願掛けにだって犠牲は不可欠だったのに。
「芦屋くんに話さないといけないな」
父の言葉に頷き、メールを送るとちょうど仕事が終わったタイミングだったようで、1時間後に最寄駅まで来てくれることになった。
「なにかあればすぐ連絡してくるんだぞ」
「うん」
深妙な面持ちの父と駅で別れ、構内で一際大きな存在感を放つ、ツリーを見上げる。
「もうクリスマスか……」
色とりどりの飾り。
まばゆいばかりに輝くライトはテンションを上げてくれる。
そのはずなのに、なんだろう。
今日は見てもなんとも思わないどころか、見れば見るほど疎ましく見えてきた。
それはきっとサンタさんへの願い事が叶えられないことを知ってしまったからだろう。
「お父さんは関係ないのに」
芦屋さんを待つ間、クリスマスツリーの前で呟く。
「お父さんの悲しむ顔は見たくなかったのに」
溢れる感情を止められず、手で顔を覆った。
そして数十秒後、ゆっくりと手を退け、目を開けると、さっきと何ら変わらない景色が目の前にあった。
いや、恋人たちが集まってきて楽しそうな声が加わっている分だけ余計だ。
耳には明るいクリスマスソングと楽しげな声が塞いでも鳴り響いてくる。
「わぁ!綺麗」
「写真撮ろうよ」
幸せの塊。
それが目の前にある。
私は不幸のどん底に叩き落とされたようなもので、不平等以外のなにものでもないのに。
「不公平だよ」
そう呟いた瞬間、ドロリとした不快な血が全身を巡った。


