「移植した腎臓に、腎炎が再発しています」


2週間も早く病院から連絡が来た時点でおかしい、と思っていた。

それでも、"うまく検体が取れなかったので"という話しの可能性もあると思っていたのに、再発。


「どうして」


原疾患が再発をきたしやすい類のものだから、覚悟はしていたけれど、免疫抑制剤の服薬を忘れたことはないし、食事や生活習慣には気を使っていた。

それは同席している父も承知している。


「先生。どうしてなんですか?」


父の感情を押し殺すような淡々とした口調が、余計に胸を痛くする。

医師も表情を翳らすだけで明確な答えはくれない。

ただ、治療の進歩により、改善例が報告されている治療法があることを教えてくれた。


「あとは再移植という方法もありますが、再移植は外科手技的な難易度に加えて、免疫学的な難易度が上がってしまいます」


過去に移植された腎臓と同様な免疫細胞が再度移植された場合、強烈な拒絶反応を起こすらしい。


「ただし、通常2回目まではそれほどリスクはないし、方法がないわけじゃないですから」


医師は安心させるように言葉を重ねてくれたけれど、現時点でドナーとなってくれる人物が身内にいない。
となるとドナーが現れ、順番が回って来るのを待つしかない。

先の見えない真っ暗な状況が気持ちを沈ませる。


「現時点ですぐに出来る治療をお願いします」


父の答えに医師は頷き、入院日が決まった。