七夕の伝説


「へぇ。理絵が一目惚れねぇ」

「はっ?はぁー?そ、そんなんじゃ、ないよ!ただ、菜那が男と一緒にいるところって見たことなかったからさ〜?モテ期でも到来しているのかと思って?どんな人か知りたかっただけ!」


理絵はまくし立てるように早口で答えた。

それが余計に動揺しているように見えて、黙って様子を伺っていると、みるみるうちに理絵の顔はさらに赤くになった。


「やっぱり惚れてるんじゃん」


佳苗の冷静な指摘に理絵は耳まで赤くした。

それを隠すように手で覆う理絵が可愛くてニヤついてしまう。


「もうっ!菜那まで笑わないでよっ!」

「ごめん。でもいいかも。理絵と昴」


相手を思いやる気持ち、他人の目を気にしない自我を貫く性格、派手な見た目。


「似た者同士なのかも」

「そうなの?」


理絵に聞かれて頷く。


「ていうか、名前は昴さんっていうんだね」


理絵の言葉にまた頷く。


「歳はふたつ上。恋人はどうか分からないけど、家がお隣さんでね、今は入院後から体調があまり良くない私を気遣ってくれて、朝のラッシュ時だけ付き添ってくれているの」

「へぇ。優しいんだね」


理絵が感嘆の声を上げた。


「でも」


佳苗が逆説を口にした。


「幼馴染ってだけでそこまでする?菜那のこと、好きだからしてくれるんじゃないの?」


佳苗の言葉に理絵が反応したのが分かった。

だから嘘偽りなく答える。


「お父さんが昴に頼んだの。私は大丈夫って言ったんだけど、すごく心配してて。体力も結構落ちちゃったから」

「そういえばずっと体育も休んでいるもんね。大丈夫なの?無理してない?」


理絵の言う通り、退院後からは体育を事情を話して休ませてもらっている。