七夕の伝説


「それで今日は?」


首を傾げた父に、芦屋さんは立ち上がり、席を譲りながら答えた。


「菜那さんに会いたくて。病院にまで押し掛けてきてしまいました」


芦屋さんの言葉に、父が私と芦屋さんを交互に見て様子を伺っている。


「そういう仲じゃないから」


首を横に振り、父の勘繰りを否定するも、芦屋さんが間に割って入ってきた。


「僕はお付き合いさせて頂きたいんですけど。ダメでしょうか?」

「ダメです」


間髪入れず、父に代わって答える。


「私は芦屋さんとはお付き合いしません」

「好きなのに?」


芦屋さんに聞かれてグッと言葉に詰まる。

好きか、嫌いかと聞かれたら好きだから。


「でも苦しいので」


吐き出すように答えると、父が間に入った。


「そういうことか。なるほど。合点がいったよ。菜那の様子がおかしかったのは彼のことが原因だったんだな」

「あ、そうだ、お父さん、ごめんなさい。心配かけて。さっき昴が来て、お父さんが心配しているって話し聞かされて」


私はそこで区切り、芦屋さんの方を見て続ける。


「父に心配かけるような恋愛は私にはできないんです。ごめんなさい」


頭を下げてはっきりと気持ちを伝えた。

その頭に父の手が乗った。


「菜那」


父の柔らかな声に顔を上げると、父は私に優しく微笑み掛けながら言った。