でもふたりは芦屋さんの連絡先は知らない。
「ふたりから事務所宛に手紙が届いたんだ。"菜那は連絡を待っています。それに久しぶりの検査で不安だろうから、少しでも会いに行って欲しい"って。頭のいい、素敵な友達だな」
後者が気になり、聞くと、ふたりは派手な封筒に私の名前を書いて手紙を出したらしい。
「目立つ上に、越水も知っている名前だったから。ファンレターの合間を縫ってちゃんと俺の元に届いたんだ」
なるほど、としか言いようがない。
でもふたりの好意を手放しでは喜べない。
芦屋さんから離れるように身動ぎ、距離を取り、きちんと目を見て言う。
「私、越水さんに芦屋さんとはもう会わないって伝えて欲しいと言ったんです」
「え?」
芦屋さんの表情が目に見えて翳った。
歪む顔を見て、傷付けてしまったことを悔やむ。
でも、悔やんでも仕方のないことだと謝罪の言葉を口にしようと思ったところに、本日3人目のお見舞い客が来てしまった。
「菜那!退院日が決まったぞ~」
張り詰めた空気を切り裂くような勢いでカーテンを開けて入って来たのは父だった。
「ん?んん?え?!本物か?!」
父はベッドに腰掛けている芦屋さんを見て、何度も目をこすって確認している。
「本物ですよ」
芦屋さんは驚かれることに慣れているのか、柔らかく微笑みながら、ベッドから降りて、父に挨拶した。
「芦屋星です。初めまして」
「あ、菜那の父です。えっと…あ!ケーキご馳走さまでした。あと、七夕の日、菜那に付き添っていてくれてありがとうございました。モデルは事前に知らせていただいた方が良かったです」
突然、芸能人を前にして動揺しているはずなのに、きちんと言いたいことを全て伝えられる父をすごいな、と変に冷静に思った。


