「えっと…あ、そうだ。なにか飲みますか?」
冷蔵庫を開け、昴からもらったミネラルウォーターを出すも、芦屋さんは首を左右に振る。
「じゃあ…って言っても、お菓子はないし」
どうしよう、と迷っていると、芦屋さんは立ち上がり、カーテンを閉めると、マスクを外してベッドに腰掛けた。
そして私にゆっくりと手を回すと、力一杯抱きしめてきた。
「あの、こういうのはちょっと」
抵抗するも、芦屋さんの手は緩まない。
「ごめん。ずっと連絡出来なくて」
謝罪する声が震えている。
傷付けたのは私なのに。
だから今更だけど謝罪の言葉を口にする。
「私こそごめんなさい。何も言わずに帰ってしまって。それと…越水さんに伝えてもらうよう言ってしまって。本当なら直接言わないといけなかったのに」
そう言うと芦屋さんは抱き締めていた腕を解き、私の顔を覗き込むようにして見た。
まるで「何の話?」とでも言いたげな表情に首を傾げている。
「え?もしかして越水さんから何も聞いていないんですか?」
「撮影が楽しかったって話なら聞いたけど?」
信じられない。
肝心な話が伝わっていないなんて。
「どうして」
呟くように言うと芦屋さんが怪訝そうな顔で私の顔色を伺ってきたものだから、小さく首を振り、現状から確認に入る。
「えっと、じゃあ、いったい芦屋さんはどうしてここに来たんですか?連絡できなかったことをなんで謝るんですか?そもそも、私が入院していることは越水さんにも話していないのに、どうして居場所が分かったんですか?」
一気に聞くと、芦屋さんは困ったように眉根を寄せて微笑んだ。
そして最後の質問の答えをまずくれた。
「菜那の友達が入院先を教えてくれたんだよ」
「理恵と香苗が?」


