「これ。土産」


ベッドサイドに腰掛けるなり昴がくれたのはミネラルウォーター。

『見舞い』ではなく、『土産』と言ってくれるのも嬉しい。


「ありがとう」


些細なことでも気にかけてくれる昴の優しさに心がほっこり、温かくなる。


「飲み物はちょうど無くなりそうだったから。ほんと、ありがたい」


受け取り、ベッドサイドに備え付けられている冷蔵庫の中に入れる。


「で?検査結果は?まだなのか?」


ベッドサイドに置かれた椅子に腰掛けた昴が聞いてきた。

私はベッドに腰掛け、答える。


「まだ。ひと月くらいは掛かるんだ…って、あれ?今更だけど、昴に検査入院するって話したっけ?」

「いや。おじさんから聞いた」


昴と父はすごく仲がいいわけではない。

互いにお隣さん、という意識でしかないだろうに、なぜ、父が昴に話したのか。

詳しく聞けば、父は私の最近の様子を気にかけていたらしい。


「偶然出くわした…いや、俺を待っていたのかな?とにかくおじさんに会った時、ここ最近で菜那に何があったか、知らないかって聞かれたんだよ」


高校が違い、生活パターンも違う昴が知るはずないのに、父が聞けるのは昴しかいなかったのだ。

待ち伏せてでも、娘を知りたいと思い、行動した父を想うと胸が痛んだ。

父にも話せばよかった。


「何かあったのか?」


昴に聞かれて、話そうか迷った。

でも、今更隠すことではないし、父を心配させるような関係は清算して正解だ。


「終わった話だけど」


と切り出し、モデルをやったこと、芦屋さんとはもう会わないと人伝にお願いしたこと、その人とも連絡が取れなくなってしまったことを話した。