3日後の午後。


「検査による合併症はなさそうだから、予定より少し早めに退院出来るよ」


担当医からの話を受けて、それなら、と、体が鈍らないように、廊下を歩くことにした。

早めの退院と、芦屋さんの連絡先を消したことで気持ちは少しだけ軽くなり、足取りも軽い。


「無理しないようにね」


すれ違った看護師さんに声を掛けられた。


「はい」


と答えたものの、自由に歩けることが嬉しくて、階段まで昇降してしまう。

でもベッドで過ごしていた体はすぐに疲れてしまい、足が気だるい。

部屋に戻って休もう。

そう思って病室へと続く、エレベーターホールに差し掛かった時、到着したエレベーターから降りて来た人の中に、見覚えのある姿があった。


「昴」


私の声に気付いた昴は手を小さく挙げ、ゆっくりと歩いて来た。


「元気そうだな」


いつもと同じ台詞ではないけれど、「大丈夫か?」という言葉は特に病院で言われると自分の顔や体が弱って見えているのだと思わされるから、昴の言葉は嬉しくて、にやけてしまう。

それに対して昴は眉間にしわを寄せた。


「昴。顔、恐いよ」


今日も派手な色と柄の服を着て、髪をオールバックになんてしているものだから、眉間のシワが余計に恐く見える。

廊下ですれ違う患者やスタッフの方々からの好奇な視線も痛い。

でも昴が悪い人間じゃないのは知っているから堂々とした態度で、2人部屋なのにひとりで使っている病室に昴と一緒に入る。