『お掛けになった番号は……』
繋がらない。
車内にいれば落雷に合う心配はないにしても、構内が停電になるくらいの落雷だ。
停電に伴う事故に合う可能性は低くないだろう。
通信手段はみんなが一斉に携帯電話を使っているから電波が悪くなっている可能性もあるけれど、どんな理由であれ、父が無事でいることの確証にはならなくて、不安だけが募る。
どうしよう。
怖い。
怖い。
怖い。
落雷や停電より、父を失うことの方がはるかに恐ろしくて背中に寒気が走る。
何度掛け直しても、繋がらない。
「ど……して。ど…しよ……」
通話ボタンを押す指が小刻みに震える。
でも、父の安否を確認しなければ。
「お願い…出て」
祈るように目をギュッと閉じ、スマートフォンを強く握りしめる。
「大丈夫?」
どこからか声を掛けられた気がした。
「ねぇ。きみ、聞こえている?ねぇ、ちょっと、ほんとに大丈夫?!」
切羽詰まった声が耳に届いた。
誰かが私に声を掛けてくれているようだ。
でも、頭の中は父の安否のことでいっぱいで反応出来ない。
二の腕に触れられた感触でようやく五感が戻った。


