七夕の伝説


「ちゃんと眠れている?学校、大変なの?」

「学校じゃなくて。ちょっとプライベートで色々ありまして」


止血にはまだ時間がかかりそうだったので、そう答えると、看護師さんは何度か頷いた。


「高校生だもの。色々あるわよね。でも、体に負荷のかかるような恋煩いはダメよ」


ぱちっとウインクされたことに、苦笑いでも出来たら良かったのだけれど、まさか恋煩い、なんて言われると思ってなくて反応に困ってしまった。

でも、少し嬉しかった。

大病しても普通の高校生と同じような悩みがあるんだって、思ったから。

あとはこのまま問題なしの結果が出てくれたら、それでいい。

芦屋さんのことは今もまだ、どこかで連絡が来るんじゃないか、って期待しちゃっている部分があるけれど、さすがにこれ以上待つのは体に良くないってわかっている。

それに悲しみや切なさは時間が必ず解決してくれることも、私は知っている。

だから施術後の3時間、絶対安静を言い渡されている間に越水さんと芦屋さんの連絡先は消した。

そこまでしなくても、って思うかもしれない。

モデルの写真だって出来たら欲しい。

でも今やらなければダラダラと待ち続け、体を壊してしまいそうだから。


「これでいいの」


天井を見つめながら、声に出して呟き、決意を新たにした。