「じゃあ、始めようか」
担当医が看護師と私に声を掛け、検査は始まる。
まずはベッドに仰向けで寝た状態から、超音波で移植された腎臓を医師が観察する。
「ここにしよう」
針を刺す場所が決まったようだ。
となると、次は麻酔の注射だ。
「ちくっとするよ」
「はい」
短く答え、目を閉じると腰の部分に小さな痛みが走った。
そして麻酔が効いたところで生検用の特殊な針で腎臓を刺す。
組織を採る回数は毎回違っていて、今日は3回刺したところで終わりの声がかかった。
「お疲れ様」
看護師さんの優しい声が不安を少しだけ和らげてくれる。
「もう少しこのままでいようね」
腎臓から出血しないように、針を刺したところを看護師さんが手で圧迫し止血してくれている。
早く止まらないかな、と天井のシミを見ながらぼんやりしていると、声が掛かった。
「今回は学校の創立記念日と祝日が重なって良かったわね」
今年はちょうど連休に創立記念日が重なったため、1週間入院しても学校を休む日はたったの2日で済む。
クラスメイトよりも少し多めの連休にはなってしまうけれど、クラスメイトに詮索されることもないのでとても都合がいい。
「連休中に検査入院という形が取れてよかったです」
「そうね。でも、今回は特に自覚症状や定期検査に問題はなかったのよね?」
看護師さんに言われて頷く。
でも顔色が良くないことを指摘されてしまった。