「楽しい?」
髪型とメイクを直している芦屋さんに聞かれて小さく頷く。
「この機会を与えてくださったこと、感謝しないといけないですね」
「そう言ってもらえて嬉しいよ。内緒にしていたこと、怒っていると思ったから」
その通りだけれど、今は純粋に感謝の気持ちでいっぱいだ。
「あ、そうだ。ベールアップの意味、教えていただけませんか?」
そう聞くと、髪の直しを終えた芦屋さんは、ベールの端を手に取り、答えてくれた。
「ベールアップはね、魔除けを取り去って、花婿が花嫁を代わりに守っていく決意の表れなんだって」
芦屋さんはそこで一度、口を噤むと、ゆっくりとベールを上げた。
視界が晴れ、芦屋さんの顔がはっきりと見える。
柔らかく微笑む芦屋さんの顔を見て、鼓動がキュウッと締め付けられ、思わず俯いてしまった。
「菜那」
名前を呼ばれて恐る恐る顔を上げる。
すると芦屋さんは私の頬に触れ、真っ直ぐに私を見下ろした。
触れられている部分が熱い。
真剣な眼差しは私の心の中を見透かすようで苦しい。
でも逸らさずにいると芦屋さんが口を開いた。


