「大丈夫ですか?」
聞くと越水さんが答えた。
「大丈夫よ。如月さんがあまりに綺麗で固まっちゃっただけだから。ほら、なんとか言ってあげたらどうなの?」
越水さんに肘で小突かれて、芦屋さんはハッとしたように意識を取り戻し、口を開いた。
「菜那…すごい綺麗だよ」
「プロの技術ってすごいですね。芦屋さんの女装の時も思いましたけど」
鎌倉に言った時のことを思い出して答えたのに、芦屋さんは首を横に振る。
「菜那は素材がいいんだよ。すっぴんももちろん可愛いけど、メイクが映える。ね、越水さん。菜那、スカウトしない?」
芦屋さんに言われて越水さんが答えた。
「もうスカウト済よ。あとは如月さん次第。撮影、楽しかったら事務所に入ってちょうだいね」
そう言い残し、離れて行った。
「本気かな?あ、それより、これからどうしたらいいんですか?」
芦屋さんに聞くと、スタッフの方が来て立ち位置やポージングなどを指示してくれた。
緊張するけれど、顔は写らないように配慮してくれているおかげで表情を作る必要はなく、さほど苦にならない。
「疲れていない?大丈夫?」
時折、芦屋さんや越水さんが気にかけて声を掛けてくれるけれど、大丈夫だと笑顔で応える余裕もあった。


