「菜那はうそつきだね」
芦屋さんはそう言うと試着室から出て、ハンガーラックからレースのベールを手に取り、私の頭に被せ、顔の前にベールを下げながら言った。
「ねえ、菜那はどうして結婚式でこのベールをするか知っている?誓いのキスをする時にどうせ上げるんだから顔を覆う必要なんてないのにさ。おしゃれだから、じゃないんだよ」
「ではなんのために?」
そう訊ねるも芦屋さんは答えをくれなかった。
「ヘアメイクが終わったら教えてあげる」
「そんなの」
きっとスマートフォンで調べればすぐに分かる。
でもそれをしなかったのは芦屋さんと交代で越水さんとヘアメイク担当の女性が入ってきたから。
「ごめんね、傷のこと。配慮してあげられなくて」
越水さんに言われて、芦屋さんが話したのだと分かった。
その上で首を横に振る。
「こちらこそ、取り乱したりしてすみません」
「ううん、いいのよ。それより、芦屋、器用ね。ちゃんと着せ付けてあるわ」
越水さんが編み上げの部分を見ながら言う。
「あと少しだけ手直しが必要だけど、そこはもう傷が見えたりしないから」
頷いて見せると、越水さんも微笑み返してくれた。
それから髪とメイクを施してもらい、ヒールの靴を履いてスタジオへと入る。


