七夕の伝説


「そっか」


芦屋さんは伏し目がちに小さな声で言った。


「菜那が信頼するくらいなんだから昴さんはいい男なんだろうな。でも」


芦屋さんはそう言うと鏡越しに私を見ながら言った。


「昴さんを恋愛対象としては見ていないでしょ?」

「どうして」


勘違いしていたわけじゃなかったの?

混乱する私に芦屋さんは言う。


「昴さんに対してドキドキしたり、苦しくなったりはしないよね?俺だから苦しいんだよね?」

「いえ」


本当はその通りなのだけれど、気持ちをグッと押し込めて言葉にする。


「恋愛はしないと決めているからです。だから昴のことも芦屋さんのことも好きにはならない。苦しいのは芦屋さんが分かってくれないからです」


はっきりと言えた。

芦屋さんは私の真意を問うように顔色を見てくる。

そういえば、芦屋さんは私の傷を見ても目を逸らさなかった。

それなのに私は断っている。

どこか矛盾を感じながらも、視線を受け止め、二言はないことを態度で表す。

でも通じなかった。