七夕の伝説


「菜那?開けていい?」

「あ、はい」


ドレスは袖を通し、胸元まで引き上げていたから下着姿を晒すことはなく、多少、恥ずかしさは薄れる。

それに、自身の姿よりも芦屋さんのタキシード姿に目を奪われ、呆然となってしまった。


「菜那?」

「あ、ごめんなさい。あまりに素敵で」


そう言うと芦屋さんが破顔した。


「嬉しいな、そう言ってもらえて。でも髪をセットしてもらったらもっとかっこよくなるよ~?」


芦屋さんはおどけた口調で言ったけれど、きっとその通りなのだと思う。

こんなに素敵な男性とウェディングドレス姿で並べるなんて、奇跡みたいだ。

最初で最後の思い出が芦屋さんとでよかった。


「越水さんにお礼言わなきゃ」

「え?」


私の呟きに芦屋さんが反応したので首を横に振ると、芦屋さんは私の背後に回り込んだ。

と同時にやっぱり見られたくないという意思が働き、思わず身を翻してしまう。
 

「大丈夫だよ。鏡、見ていて。俺の顔だけ見て。俺が目を背けないか。それだけ見ていてくれたらいい」


芦屋さんの静かな声に意を決して頷き、鏡面に映る芦屋さんの顔を横から見つめる。

すると芦屋さんは柔らかく微笑んだ。