七夕の伝説


気持ちは嬉しくても私が耐えられない。

顔を背けると、芦屋さんは私の頬に手を触れ、それから両手で包み込んだ。

反射的に芦屋さんを見上げると、真剣な顔で言った。


「もし、俺が菜那の傷口から目を背けたら、俺のこと振ってくれて構わないよ」


芦屋さんの言葉に胸がドクンと反応した。

表情も強張る。

でも、その条件があるならいいかもしれない。

芦屋さんは私が断ることを感じているようだし、芦屋さんが言い出したのだから傷つけても最小で済む。

ずるい私は芦屋さんの提案に乗った。


「じゃあ、制服脱いで、下着に着替えて。それからドレスは……」


芦屋さんはハンガーラックに掛けられているドレスを手に持って来て試着室の床に広げた。


「着替えられるところまで自分でやってみて。後ろの編み上げは出来ないと思うけど、腰まで着るくらいは出来ると思うから」


芦屋さんは私が恥ずかしくないように配慮してくれた。

その気持ちごと受け取り、試着室へと入る。


「俺も着替えてきちゃうから。それまでちょっと頑張って。大丈夫。誰も入れないようにするからね」

「ありがとうございます」


芦屋さんの気持ちが嬉しくて、涙が出そうだった。

でも泣いてはいられない。

ここまで気を遣わせてしまったのだ。

出来ることをやろう。

それから四苦八苦しながらドレスも着てみると、芦屋さんがやって来た。