七夕の伝説


「菜那さんを生かしてくれてありがとうございます。おかげで菜那さんと出会うことが出来ました。『あなたは何者ですか?』って?あぁ、すみません。申し遅れました。俺は芸能活動している者です」


芦屋さんが架空の、母とのやりとりを口にしているのが少し可笑しくて、強張っていた顔から力が抜ける。


「『売れているの?』ですって?えぇ。それなりに。収入もそこそこあります。『見た目はカッコイイものね』って、そうなんですよ。自慢じゃないですけど、結構人気あるんです。でも残念ながら菜那さんは俺のファンじゃないし、俺の恋人にもなってくれないんです」


そう言うと芦屋さんは肩を竦めて小さく笑ってから続けた。


「『もったいないじゃない』って思いますよね。菜那さんは病気を理由に恋愛も結婚もしないって言っているんです。知っていましたか?」

「知っていますよ。私、ちゃんと声に出して願掛けしているので」


私が代わって答えると、芦屋さんは立ち上がり、私の体を背後から抱き締めた。