にべないオウジ



慌てて自分の元にアイスを引き寄せて、垂れ落ちるアイスを舐めた。

するとオウくんが分かりやすくこっちを見ているので、視線だけを上にして、目が合う。


「……かぶりつきたい…」

「え?アイスまだ食べる?」

「えっ、あ、違う、なんでもない」


なんでもないことないと思うけど。顔、赤いし。きっと暑いんだ。今日は蝉もうるさくて、とても暑い。


「いいよ、あげる。一緒に食べよう?」


そう言うと、赤信号で止まったオウくんは一瞬だけ、口元を緩めた。

あのオウくんが喜んでいるような気がして、私も嬉しくって、何本でもアイスを分けてあげたくなった。


私、オウくんが嬉しいと、私も嬉しいんだ。

そんな当たり前のことに今気が付いて、顔が熱くなる。

彼が悲しい時は私も悲しくなるし、悲しい思いはしてほしくないし、悲しみを全部分け与えてくれたらいいのにって思う。

だけど、彼が嬉しい時は私も嬉しくって、この気持ちを共有したくなるんだ。


「……美味しい?」

「…ん」

「あの、また、買い物行った時も、アイス買ってほしいな」


もう私と買い物なんて行きたくないだろうけど。だけどオウくんはその言葉に、「一本だけな」と答えて、唇の横についたアイスを舌で舐めとった。

その姿にたまらなくドキドキして、私はこの人に、触れたくなった。