一緒にスーパーに行くことを許してくれたみたいだ。オウくんは面倒くさくなったのか、隣で歩く私にもう何も言わない。
「……お母さん、大丈夫なわけ?」
「え?」
「連絡。急に夜ご飯いらないっつったら、怒られるだろ」
あのオウくんから「お母さん」なんて言葉が出てくるのが可笑しくて、ちょっと笑ってしまった。それに私のお母さんが厳しいこと、知ってくれてたんだね。
「うん。忘れてた。ちょっと電話するね」
「忘れてたぁ?」
「オウくんと鍋できるの嬉しくって。だって給食以外で一緒にご飯食べることなかったもん。修学旅行も女の子が取り囲んでたから近付けなかったし」
「……しんどい」
「えっ?」
電話をかけようとスマホに耳を当てると、オウくんが苦しそうに胸を掴むので電話を切ろうとする。
けど、大丈夫だからと左手を突き出すオウくんに、首を傾げながらコール音を聞き続けた。
しんどいって、何がしんどいんだろ。大丈夫かな。
コール音が終わって、人が出る。それは母じゃなくて、私の姉だった。
母の携帯にかけて姉が出るということは、また買い物に行ってスマホを置き忘れたのだろう。
私よりも5つ上で、大人っぽくて、綺麗なお姉ちゃん。「透子どしたの?」と透き通った声が聞こえる。

