「オ、オウくんっ、待って…!」
てか、歩くの、速すぎ!!
いつも、たまーに私と並んで歩く時はそんなに速くなくない?
そう思っていたら案の定、私の声が聞こえたのか、彼の歩幅は狭まって、ペースがゆっくりになった。そんなの、私に合わせてくれてるみたい。
いつも、歩く時は私に合わせてくれてたの?そんなことは聞けなくて、ぐっと言葉を飲み込む。
たまに、勘違いしそうになる。オウくんに、優しくされてるって。
「私も、買い出し手伝いたい」
「は?ろくにスーパーも行ったことないお前に何が出来んだよ。邪魔だからついてくんな」
「わ、私だって買い物くらいできるよ!」
大学を出た瞬間、右から勢いよく飛び出してくる自転車に、思わず目を瞑る。
だけどオウくんが私を強く引っ張ってくれたから、自転車にぶつかることはなかった。
「…ったく、だから大人しくしてろって言ってんのに」
オウくんが前髪をかきあげて、溜め息を吐いた。その姿が、あまりに色っぽい。
このドキドキが、自転車にぶつかりそうになったからなのか、オウくんが守ってくれたからなのか、分からない。

