にべないオウジ



遊馬くんの家で、鍋。私そんな風に人の家で鍋パとか、したことない。オウくんも、来るんだろうか。

じっと黒髪の彼を見つめる。怠そうに瞳がこちらを向いて、しばらく目が合った。


「オウくんも、行くの?」

「……まぁ」

「じゃあ私も行こうかな」

「え」

「え?ダメ?」


私の言葉になのか、単に噎せたのか、彼はゴホゴホと咳き込んで顔を歪めた。苦しかったのか、涙目のまま、私を見る。


「……ダ、ダメじゃねーけど」

「そっか。良かった。…あ、私、男の人の家に入るのって初めてだ」

「へ、へえええ。透子ちゃん、それはちょっと言わないでほしかったなああ?」


今から買い出しに行くのだという。突然不機嫌になったオウくんが一人ですたすたと歩き始めるので、困惑して遊馬くんを見る。

何年もオウくんを見てきたけど、未だに彼の沸点が分からない!何かまた空気読めないこと言った?全然分からない。だけどきっと、言ったんだろうなぁ。


遊馬くんが「桜司と一緒に買い出し、お願い!」と手を合わせるので、とりあえず慌ててオウくんの背中を追いかける。

キリちゃんも呼んでくれるみたいだ。

私は心底ホッとした。