"とてもねむい"という文字が、白いTシャツの胸の辺りにデカデカと書かれている。
どういうセンスをしているんだろう。
「諦めないよ。今うちの成績が悪くて彼の助けが必要なんだ。もう弓道に飽きたのかも知れないけどやり出したらまた面白くなってくるだろう。彼さえ入ってくれれば大会に優勝出来るだろうし…!」
「あのっ」
突然、視界にすら入れていなかった私が喋り出すので、変なTシャツを着た男の人は驚いたようにこちらを見た。
キリちゃんも、オウくんの友達も、他の部員も、みんな私を見ている。
「……あの、無理に勧誘するの、やめてください」
この人たちは知らない。
彼がどんな思いをして弓道を辞めたのか、知らない。
「彼、弓道の話をされるときっと苦しくなります。弓道に飽きて辞めるような人じゃないんです。これ以上勧誘するのはやめてください。お願いします」
勢いよく頭を下げて、ギュッと目を瞑る。キリちゃんが私の名前を呼んで背中を摩って、顔を上げるように促した。
「へえ、透子ちゃんって、ただの桜司の金魚の糞じゃないんだ」
頭上からそんな言葉が聞こえてくるので顔を上げると、オウくんの友達が顎に指を添えながらにやにやと笑うので、私はなんでにやにやするんだと、眉を顰めた。

