にべないオウジ



なんっっだこの男!!なんだ!?小学生が好きな女の子をいじめちゃうとかそういう次元じゃない!!小学生以下!幼稚園児でもそんなことしない!!


パニックになる頭を抱えて「うおおお!?」と吠えるので、心配になったのか、桐島さんが優しく声をかけてくれる。

ああ、今はその優しさに涙が出そうだよ。


それじゃあこんなにこじれなくても二人は両思い。お付き合いを初めてハッピーエンド。それで終わりじゃないか。


じゃあなんでこんなことに…と考えた時「あ」と俺の声が漏れる。

それをこの黒い王子様が聞き逃してくれるわけもなく、凄みを帯びた目で「あんだよ」と俺を睨みつけた。

言わなきゃ殺す、言っても殺す、みたいなこの目から一刻も早く逃れたくて堪らない。


「……あー、いや、俺、久瀬さんに、工藤くんに対する感情って本当に恋って言えるの?みたいなことを、言ってしまったようなー、言わなかったようなー…」

「……」

「あ、でも言わなかったかな!うん。きっとそうだ!何も言ってない!」

「パイセン、今日の自分の服見て」


恐る恐る、遊馬くんに言われた通り、自分の胸元を見る。

白いTシャツに、大きく「嘘ついたら針千本飲ます」と達筆に書かれた文字。

この時ほど、自分のTシャツのセンスを悔やんだことはなかった。