「"お前、あの時、俺様の透子にキスしやがったのか?本当にキスしやがったのか?回答によっては今すぐここで全裸にしてキャンパス内を逆立ちで歩かせる。"と、桜司様は仰っております」
「ひえええっ!!」
ど、どどどういうことだ。状況が全然理解出来ない。理解してはいけないと頭が訴えている。
だって、工藤くんはいつも久瀬さんを冷たくあしらって、ひどい言葉を投げて、素っ気なくて、久瀬さんのことなんてなぁぁんにも思っていない。そうじゃなかった、のか?
「し、してません、しておりません、神に誓って言います!!」
とりあえず自分の身を守るため、俺は土下座をする勢いで頭を下げる。
すると、工藤くんの綺麗な唇から「はぁ…」と憂いの溜め息が漏れた。その姿がなんとも美しく、こんな状況なのに思わず見入ってしまう。
色気、半端ないな…。
「桜司様は今、クソ陰キャ男に透子ちゃんが気安く触られていたショックと、透子ちゃんと夜ご飯を食べに行くという激しい嫉妬と、また透子ちゃんに冷たい言葉を投げてしまった後悔と、その時の透子ちゃんのワンピースがとんでもなく可愛かったのを思い出して、複雑な気持ちに悶えていらっしゃいます」
ご丁寧に説明を添えてくれる遊馬くんの言葉に、俺の口角はひくりと動く。
う、嘘だぁ。だってあの工藤くんだぞ?久瀬さんを平気であしらう工藤くんが、え、そんな、まさかぁ。それが本当だって言うなら、この王子様、相当、
「とんっっっっでもなくこじらせてんじゃねえかぁぁ!!!」
面倒くさくて、ヤバイ男だ。

