「ちょ、遊馬くん、やばい!」
「え?…うわぁ!パイセン、こっち来ないでぇ!」
パイセン?って俺の事か?
どうして通りすがっただけでそんな風に言われなきゃいけないんだろう。俺、何かした?
来ないでと言われると、気になるものだ。向かいはしないものの、そのずっとうつ伏せになっている奇妙な黒髪くんを見つめる。
誰?
「あんのTシャツクソダサ陰キャ男、足の爪全部剥ぎ取ってから火炙りにして捻り殺してやる!!!」
黒髪男が勢いよく顔を上げて、今にも人を殺しちゃいそうな目と、目が合う。
ひえっと背筋に悪寒が走る様が、よく分かった。
「あーあ、もー。こっち来ないでって言ったのにぃ」
いや行ってない。行ってないよ!?ただ立ち止まってちょっと見ちゃっただけだよ!?
だってあの黒髪くんが、彼なんて思わないじゃない。
普段は気怠けで落ち着いていて穏やかそうに見える王子様が、殺人鬼のような目で捻り殺すなんて言うなんて思わないじゃない。しかもその相手、俺!!
終わった。詰んだ。人生詰みました。俺の平凡ライフ、グッドバイ。足の爪を剥がれて痛みに苦しみながら捻り殺される最期。つら。
ていうか火炙りにするんだったら、もう捻り殺さなくてよくない?十分死んでるくない?

