にべないオウジ



その姿は見ている誰もが釘付けになったし、その間は彼のこと以外何も考えられなくなった。いつまでも見ていたいと思ったし、いつまでも見ていられた。


だけど、きっとその姿は二度と見られないことを知っている。

小、中、高と弓道に向き合って、「弓道部の王子」と呼ばれた彼は、もういない。

この大学にいる人はみんな、あの凛々しい姿を知らないのだと思うと、少し胸が痛む。

あんなに神聖で美しい姿以上に綺麗なもの、過去も今もこれからも、見ることはないだろうから。


「あいつ弓道でインターハイ優勝とかしてたよね。でも高校の時辞めたんだっけ?」

「うーん、まぁ…」


曖昧に笑うと、それ以上深く二人が追求してくることはなかった。


と、その時、オウくんの友達が「あ!」と大きな声を出して指を差す。

「あいつらだよ、弓道部の勧誘」とげんなりした表情をするので、相当機嫌の悪いオウくんに振り回されているのだろう。


私とキリちゃんも、その人たちの方を見た。


「あ、君!工藤くん見なかった?」

「だからぁ、あいつはやらないっつってんですから、もう諦めてくださいよ〜」


あ、この人、さっき望遠鏡で見てたTシャツがダサすぎる人だ。