仁見さんは、列記とした男の人だけど、喋りやすくて、色々質問してくれるし、返しも落ち着いているし、とても居心地がいい。
今日はTシャツにでかでかと「そうめんやっぱり揖保乃糸」と書かれている。なんでラーメン食べに行く日にそのシャツにしようと思ったのだろう。
私はずっとオウくんを眺めてばかりだったから気が付かなかったけど、男の人って私よりずっと力持ちだし、体がごつごつしているし、何故か歩く時は車道側を歩くらしい。
今日もさりげなく車道側を歩いている仁見さんが、他愛ない話を始める。その内容にコメントをすると、可笑しそうに笑ってくれる。
オウくんと歩いたら、絶対ずっと黙ってるし、こんなふうに笑ってくれないよなぁ。というか、私に向けて笑った顔を見たことがない。
それでもやっぱり、良い意味でも悪い意味でも、私の心を動かすのはオウくんだ。
恋愛って難しい。仁見さんみたいな人を好きになれば、きっとこんなふうに悩んだりしないのかな。
「……あのさ、ごめん、久瀬さん」
歩きながら、突然仁見さんが言いづらそうに眉を寄せた。もう太陽は西に沈みかけていて、仁見さんの背景には星が数個映る。
「工藤くんのこと、調べたんだ」
「……オウくんを?」
「うん。あんなに弓道で有名だった彼が、どうして突然辞めちゃったのか、気になって。俺ですら噂に聞いていたくらい、彼は有名だったんだ。だから、調べちゃった」
別に、仁見さんが私に謝ることではないのに、もう一度「ごめん」と言われる。

