私とオウくんが付き合う姿は全く想像出来ないし、オウくんと付き合いたいなんておこがましいことは思わないけど、でも、単純にオウくんの"特別"になってみたいな、とは思うよ。
「あ、でも最近オウくんの様子がおかしいんです」
「おかしい?」
「今まで目すら合わなかったのに、時々苦しそうに顔を歪めて見てくるし、素直にごめんって謝ってきたし、この前は何故か私の好きなパン屋さんでチョココロネ買ってきてくれたし」
チョココロネの時なんて、今すぐ目の前で食べきらないと帰らせないと言われ、強制的に食べさせられた。あれはいじめだったのだろうか。
パンにはいつもコーヒー牛乳が飲みたくなる私に、律儀にコーヒー牛乳まで渡してくれて、たまたまなのか、知っていたのか、また疑問が残った。
そういえばオウくんがおかしくなったのは、「彼氏でも作ってこい」と言われた時くらいからだ。
「透子、それは…」
「何かの病気なのかも。だってオウくんが素直に謝るって、よく考えたら天変地異だよね」
キリちゃんは「桜司…」と唸って頭を抱えた。
そのままキリちゃんはバイトに向かうと言って、途中でお別れをする。仁見さんと、私。長さの違う二つの影が、並んだ。

