「い、いやぁ、そんなのだめだよ。告白されたから付き合うって、相手のこと好きじゃないわけでしょ?絶対続かない。そんな素性も知らない相手に透子は渡さないから!」
「……まだ誰にも告白されてないし、そんな予定ないから心配しなくて大丈夫だよ?」
「あ、あぁ、そっか…」
キリちゃんは自分に言い聞かせるように頷くので、何かあったのかと不思議に思う。仁見さんが次の話を始めて、詳しいことは聞けなかった。
「さっきの話だけどさ。久瀬さんは、工藤くんと付き合いたいとか思わないの?」
「付き合い、たい…?」
オウくんと?私が?
「そう。好きなんだったら普通そう思うでしょ?付き合ったら、相手と触れ合って、いちゃついて、その延長線上にキスとかがあるんじゃないかな」
そもそも"付き合う "というイメージがいまいち掴めていない私は、やっぱり上手く想像することが難しい。
好きな人同士がお互いの特別になって、他のことより相手の優先順位を高くして、手を繋いだり、微笑み合ったり、キスをする。
どうしよう。
私とオウくんがそんな風になっている姿を、まっっっっったく想像出来ないや。
「……思わないです」
正直に首を振ると、またキリちゃんが動揺して「そんなこと言わないでぇ!」と声を荒らげた。今日のキリちゃんは情緒不安定だ。

