「なんの話してたの?このダッサい人と。あれ、結局付き合うことにしたんだっけ?」
笑顔のままダサいTシャツの男を見て首を傾げる。
「ねえねえ、君、名前なんて言うの?俺は遊馬。遊馬でいいよ。苗字なんだけどね」
「ひ、仁見です」
「仁見?それも苗字?」
「……ああ」
「へえ。名前みたいな苗字。俺と一緒だ」
そのセンスは全く理解出来ないししようとも思わないけど、同じような苗字に親近感を覚えて、俺は気分を良くしたまま二人の座るテーブルの椅子に腰掛けた。
透子ちゃんが控えめに「先輩だよ」と言うので、驚く。
へー、勝手にタメだと思ってた。まあどっちでもいいけど。
「話戻るけど付き合ってないよね?ダメだよ透子ちゃん。そんなことされたら俺の平穏が失われるんだから〜」
荒れ狂う桜司を想像して、背筋に悪寒が走る。それに振り回されるのは俺なんだから、勘弁してほしい。
「……付き合ってないよ」
「そ?ならいいんだけど」
桜司を応援する身としては、二人の仲は無理矢理でも引き裂かないといけないからね。俺は満足げににっこり笑った。

