にべないオウジ



話しかければいいのに、安易に話しかけようとはしない。

彼女は今日も後ろの席が空いているのに真面目に前の方に座って、後からやってくるキリちゃんに微笑む。

俺も、昨日の手前、軽い気持ちで話しかけるのを躊躇ってしまう。失敗した。あんなことするつもりじゃなかったのに。もし桜司にバレたら殺されそう。


透子ちゃんの肩は、細すぎて、やわすぎて、俺が触れるとすぐに壊れてしまいそうで、とても怖かった。





昨日以来彼女と話すことになったのは昼休みが終わった時のことだ。

透子ちゃんは三限目が空きコマらしく、大学のカフェで時間を潰していた。

俺はというと三限目も授業があったけど運勢も悪かったしサボって帰ろうかなと思っていたところ。


だけど、帰るのをやめる。

透子ちゃんが楽しそうに、センス無いTシャツを着た男と談笑していたからだ。


今日のTシャツは、"ポテチはコンソメ一択"…。俺はのり塩派なんだけどなあ。趣味が合わなそう。


「とーうこちゃん」


ビクリ 彼女の細っこい肩が揺れて、後ろを振り返る。俺だと分かると、警戒するように一瞬顔を強ばらせた。

かわい。よく今まで悪い輩に食べられなかったなあと思う。