「ラッキーアイテムは?」
「え?」
ラッキーアイテム。と、もう一度桜司の端正な唇が動く。
男の俺でも思わず見とれてしまう。
ラッキーアイテム?今までそんなの聞いた事なかったのに。
「チョココロネ」
「ふーん」
「桜司、何座だっけ?」
「おひつじ座」
ああ、桜の季節に生まれたのね。
もっと色々聞きたかったのに、教室に彼女が入ってきたので桜司は俺の話を一切耳に入れなくなった。
彼女は社会学部で、俺達は経済学部。必修科目の授業は違うけど、こうやって共通科目は同じ授業を選択することが出来る。
桜司は透子ちゃんの共通科目と時間割を全て把握しているし、同じ共通科目が取れるように必死に時間割を組んでいた。
そのくせ、同じ授業を取っていても透子ちゃんに話しかけることはしない。
いつも前の方に座る透子ちゃんを、一番後ろの席で、ぽうっと眺めている。
健気だねえ。

