にべないオウジ



イライラして、舌打ちをする。

普段そんな様子を見せない俺に、彼女は一瞬ビクリとする。


「じゃあ、透子ちゃんが埋めてよ」


白くて、ほっそい身体。多分ちょっと本気で力を出したらすぐに組み敷きれるだろうし、どれだけ抵抗されても無茶苦茶に押さえつけられる。


「俺の寂しさ、透子ちゃんが埋めてよ」


嫌だと暴れられても押さえつけることなんて容易いはずなのに、どうして桜司はそれをしないんだろう。

透子ちゃんを愛しているから?

いや、違うな。あいつは怖いんだ。

この汚れを知らない真っ白な透子ちゃんを、自分の手で汚してしまうのが。


人の愛し方も知らない奴が、一丁前に好きな子を壊さないようにしてる。

健気だねえ。


「埋まらないよ」


世の中の汚い部分を何も知らないような、周りから温められて生きてきたようなこの子が、強い瞳で真っ直ぐに俺を見た。

一瞬、息の仕方を忘れる。


「私じゃ遊馬くんの寂しさは、埋まらない」