にべないオウジ



「次はいつ会えんの?」


ホテルを出て、彼女が車で家まで送ってくれる。

俺は大学近くで一人暮らしをしているため、駅に向かう学生と鉢合わせしないように、いつも人影の少ないところで車を停車させる。


自分のスマホのカレンダーを眺めながら、彼女に訊ねた。


「彼が、しばらく家にいるの。多分1ヶ月後とかかな」


カレンダーを右にスライドさせて、次の月を見る。1ヶ月も会えないのに栞さんは平然としていて、さっきまで俺の下で乱れまくってたくせに、と口を尖らせる。


「また連絡するよ」

「とかいって、そのまま俺を捨てたりして」

「ふふ、寂しいの?」


って、何言ってんだろ。元から俺の結末は、この人に捨てられる以外ないのに。戸籍上で証明されている関係を、この人から崩すことはしないのに。


別れ間際、栞さんは軽く俺にキスをした。

ちゅうっと吸い付く音が、車内に響く。

本当ならこのまま車内でまた抱いて、一生ここから出られなくなるようにしても良かったんだけど、虚しすぎるから止めた。