私は10年以上オウくんといるけど、目が合った時間を数えると合計で3分も満たないんじゃないかと思う。
カップラーメンすらできないよ。
「ちょっと桜司!また私の可愛い透子に彼氏作れとか変なこと吹き込むのやめてよ!」
桜司ぃ、早く行こぉ?と猫なで声を出して彼の腕に絡みつく女の子なんて気にも止めず、キリちゃんがずいっと間に入った。
みんな、彼のことを桜司と呼ぶ。彼も来る者拒まずなので、それを許している。
いいなぁ、あの子たち。あんな簡単にオウくんに触れられるんだもん。いいなぁ。
「"私の"可愛い…?んん゛っ、……はっ、こいつが可愛く見えるなんて桐島の脳みそは相当お花畑だな。安心しろよ。どうせこんなパッとしない女に彼氏なんかできっこない」
「ああん!?透子なら彼氏の一人や二人くらいすぐできるわよ!」
「……キリちゃん、さっきと言ってること違う」
オウくんの眉がおもむろに歪んだ。イライラしているのだろう、舌打ちが聞こえる。
「こんなメガネをコンタクトに変えてちょっと化粧したぐらいの地味な女、誰が相手にするんだよ頭湧いてんのか!バァカ!!」
そう言い捨てて、ふん!と体を翻し、取り巻きを従えて去って行ってしまった。
怒ったら小学生の頃みたいに怒るところ、可愛いなあ。ふふ。

