オウくんの弟だ。
ちょっと前までは私より小さかったのに、高校生になった彼はもうすっかり男の子だ。偉そうに私を見下ろすところはオウくんそっくり。
顔はオウくんより穏やかそうで、中身はオウくんよりも冷めてる。私はこの弟がちょっと苦手。
制服を着て、弓道の弓を肩に背負い、華奢な体はとても背筋が良い。
オウくんの高校時代にそっくりで、やっぱり兄弟だなぁと思う。
「そういえば二人とも中学の時、劇でシンデレラやってたよね。兄貴が王子様役で、透子は……ああ、その辺の木だ」
彼は、オウくんよりもよく笑う。
心底バカにしたように。
「てか、透子見ないうちに可愛くなったね。メガネも外して、化粧も覚えたんだ?今の透子なら、馬車に変身するネズミ役くらいはなれるんじゃない?」
ずいっと突然顔を覗き込まれるので咄嗟に避けることが出来なかった私を、オウくんが強く引っ張る。
自分の背中に私を追いやって、そのまま弟を冷たい目で睨んだ。
この二人は仲が悪い。特に、オウくんが弓道を辞めた時から。

