「……嫌ってなんか、ない」
「へ」
「俺は、お前のこと、嫌ってなんかない」
信じられなくて、聞き返したかったけど、また空気読めないって言われそうでグッと言葉を飲み込む。
「俺は、俺は、お前のことが」
縋るように私を見上げるオウくんに、湧き上がるこの感情は何なのだろう。
許して、ごめんね、お願い、って言われているみたいで、どうしようもなく手を伸ばしたくなる。
私のことが?
何、オウくん。
次の言葉を聞かせてくれるなら、私、いつまでだってこのまま待てるよ。
「何してんの、二人して。シンデレラの劇でもやるわけ?大学生にもなって?寒」
プチーン。私たちの間に張り詰めていた緊張の糸が、突然鋭いハサミで切り離された。
オウくんは慌てて立ち上がって、声のした方を向く。私も同じ方を向いて、相手が誰なのかすぐに分かった。

