私、遊馬くん、そして桜司。
三人が順番に、透子の居なくなった虚しいこの状況に頭を抱える。
「あんたって、ほんっとバカだね。もう救いようないわ。私は悲しい。小学校の道徳から習い直したら!?」
「なんかよく分からないけど、透子ちゃんめっちゃ怒ってなかった?桜司が言ったこと、地雷だったの?」
「終わった。もう終わりだ…透子があんな顔、するなんて…」
透子は中学の時の数か月、クラスの女子からいじめられていた。
あからさまなものじゃなくて、いつも使っていたシャーペンがなくなったり、喋りかけてもスルーされたり、グループ分けの時にどこにも入れなかったり。
私はその時クラスが違っていたから傍で一緒に居ることができなくて、…そういえば、何かがきかっけでピッタリといじめがなくなったんだ。
一体、何がきっかけだったんだろう。
「あの子が人の感情に一番敏感なこと、あんたが一番知ってるでしょ」
桜司に散々な態度取られるのはもう慣れちゃってるけど、新生活が始まるたびあの子は毎晩眠れなくなるし、不安な気持ちを隠して生活してるってこと、あんたなら分かってるはずでしょ。
「桜司ぃ、ちゃんと透子ちゃんに謝りなよ。せっかく連絡先も分かったんだろ?こういうのは早い方がいいって」
工藤桜司は、いつもみんなの中心にいて、何考えてるか分からない瞳の中に誰しもが入り込みたくて、渇望する。
だけど中身は、好きな女の子にこんなにも憶病で、思ってもないことばかり口にしてしまう、こじらせたサイコパス。
「透子に嫌われたら、俺生きていけない」
私と遊馬くんは、盛大に長い溜め息を吐いた。